「後悔はしません」仁藤心春は躊躇なく言った。「彼を信じています。今度は私をおもちゃにしていないと」
秋山瑛真は突然大笑いし始めた。「はははは、はははは……心春、まさか温井卿介を信じるなんて。温井家の次男が最も信用できない人物だということを知らないのか?この塩浜市で、彼に背後から刺された人は一人や二人じゃない。かつて一世を風靡した大物たちでさえ、彼に裏切られて塵となった。ましてやお前なんか」
「私は彼を信じます!」心春は依然として断固として言った。「少なくとも、私が助けを求めて行き場を失った時、彼は私を助けてくれた人です。そんな彼を、どうして信じないことがありますか?」
秋山瑛真の顔色が一瞬にして蒼白になった。
「もういいです、秋山会長。手を離してください。今日はもう用事は済みましたから、帰ります」心春は言った。
この時、彼女の両手は温井卿介と秋山瑛真にそれぞれ一方ずつ掴まれていた。
秋山瑛真は唇を動かし、もう少しで口に出しそうになった——「あの時、私が助けていたら、お前は彼と一緒になることはなかったのだろうか」
しかし、その言葉は結局口に出すことはできなかった。
彼女が彼の前で跪き、必死に懇願し、何度も頭を下げたのに、それでも彼が拒否した瞬間に、もう「もしも」という可能性は消えていたのかもしれない。
「心春、後で後悔しないことを願うよ」秋山瑛真は少しずつ指を離した。
心春はようやく手を取り戻し、温井卿介に向かって言った。「卿介、帰りましょう」
漆黒の鳳凰の瞳で彼女をじっと見つめ、微笑んで「ああ、帰ろう」
温井卿介は心春の手を引いて階段を降りていった。秋山瑛真の部下たちは自分たちのボスを見つめ、指示を待っていた。
しかし秋山瑛真は最後まで、ただ二人の去っていく背中を見つめるだけで、何も言わなかった。
二人が建物を出てからようやく、秋山瑛真は振り返り、自分の心臓の位置に手を当てた。
心臓から鋭い痛みが伝わってきた。まるで無言で語りかけているかのように——実は後悔しているのは、彼自身だったのだと!
あの時、もし違う選択をしていたら、今はすべてが違っていたかもしれない!
「私ね、瑛真のことが大好きなの!」彼の耳に、幼い頃の彼女の言葉が微かに聞こえてくるようだった。
「ずっと好きでいてくれる?」