第245章 初恋映画

デパートのマネージャーはすぐに新しい白いスニーカーを山本綾音に渡した。

山本綾音は手の中の真新しい白いスニーカーを見ながら、つぶやいた。「坂下倩乃のやつ、得したわね。私の靴を踏み潰しておいて、賠償金も払わないなんて。」

「彼女が踏み潰したのなら、当然賠償すべきですね。」温井朝岚が言った。

山本綾音は驚いて、「彼女に賠償させられるの？」

「ええ、それほど難しいことではありません。とても簡単です。必ず賠償金を払わせます。」彼は言った。

「それならよかった！」山本綾音は嬉しそうに言った。

時間を確認すると、映画の時間がほぼ来ていたので、山本綾音は温井朝岚の手を引いて6階のエスカレーターへ向かった。

少し離れたところで、マネージャーと部下は二人の後ろ姿を呆然と見つめていた。

「若旦那は彼女と映画を見に行くんですかね？」部下が呟くように言った。

「そうでしょうね。」マネージャーも同じように呟いた。ここは5階で、上に行けば6階の映画館しかないのだから。

「この女性、本当に若旦那の彼女なんですかね？」部下が再び尋ねた。

「そうでなければ、若旦那がいつ女性とデパートを回ったことがあったかい？しかもタピオカを飲みながらだぞ？」マネージャーが言った。

部下は言葉を失った。確かにそんな姿は見たことがない！

山本綾音と温井朝岚は6階に着くと、山本綾音が言った。「ちょっと待って、ポップコーンを買ってくるわ。」映画を見るのにポップコーンがないなんて、本当に味気ない。

「僕が買ってきますから、ここで待っていてください。」温井朝岚が言った。

「でも……」

「君に買ってあげたいんです。」温井朝岚が言った。

そう言われて、山本綾音はもう動かなかった。温井朝岚は少し足を引きずりながら売店のカウンターまで行き、大きなサイズのポップコーンを注文した。

山本綾音は、温井朝岚が大きなポップコーンを抱え、片手にタピオカを持って、一歩一歩彼女の方へ歩いてくる姿を見ながら、鼻の奥がツンとした。

まるで二人が再会してから、毎回、彼が彼女の方へ歩み寄ってきて、彼が彼女に向かって一歩を踏み出しているかのようだった。

でも、彼女はただその場で待っているだけではいたくなかった。彼女も彼の方へ歩み寄りたかった！

山本綾音は足を上げ、温井朝岚の方へ歩み寄った！