映画が終わった時、山本綾音の目は赤く、頬には涙の跡が残っていた。
仁藤心春はそれを見て、「泣いたの?」と尋ねた。
「うん、後半を見てて、胸が締め付けられるような気持ちになって。ちょっと顔を洗ってくるね、待っててね」彼女はそう言って、急いでトイレへと向かった。
仁藤心春と温井卿介、温井朝岚は、トイレから近い休憩スペースで待っていた。
温井卿介は温井朝岚を見て、「兄さんがここで綾音さんと一緒にいるなんて意外でした。兄さんと綾音さんの関係は...」
「彼女は僕の恋人だ」と温井朝岚は答えた。
「伯父さんと伯母さんの反対は怖くないんですか?」温井卿介は意味深げに言った。「さっきの映画でも、主人公たちがどんなに愛し合っていても、最後は家族のために別れることになりましたよね」
温井朝岚は温井卿介を見つめ、瞳の色を深めながら、「僕は映画の主人公じゃない。綾音も主人公のヒロインにはならない」