第235章 彼女に会いたがる人

坂下倩乃は心の中で喜び、どうせ秋山瑛真は仁藤心春と因縁があるのだから、これを利用して、みんなの前で面目を取り戻そうと思った。

秋山瑛真が近づいてきた時、坂下倩乃は親しげに、「瑛真、さっきは私が善意で心春に川島企業が以前の契約を予定通り完了したことを伝えただけなのに、彼女が……」

しかし秋山瑛真は坂下倩乃の話を全く聞いておらず、直接仁藤心春の前に歩み寄り、彼女の手を掴んで、「俺について来い」

「どこへ?」仁藤心春は驚いた。

「行けば分かる!」秋山瑛真は言った。

「でも私、この後仕事があるんです!」仁藤心春は慌てて言った。

「古川山に君の部署に状況を説明させる!」秋山瑛真はそう言うと、仁藤心春の手を引いて食堂から急いで出て行った。最初から最後まで、坂下倩乃を一目も見なかった。