仁藤心春は温井卿介の視線に応えた。「そう、気にしていないわ」
「山田流真……私の調べた資料が間違っていなければ、お姉さんの初恋の人だよね。初恋って、そんなに簡単に気にしないようになれるものなの?」温井卿介は意味ありげな笑みを浮かべながら仁藤心春の前に歩み寄った。「お姉さん、今日は初恋についての映画を見たばかりじゃないか。初恋は最も忘れがたいものだって言っていたじゃないか?」
「そうね、山田流真は初恋だった。でも、初恋の中には忘れがたいものもあれば、そうでないものもある。もしその初恋がゴミのように吐き気を催すようなものなら、早く忘れた方がいいでしょう?」と心春は言った。
温井卿介は突然笑い出した。「つまり、お姉さんは山田流真がゴミだと言っているの?」
「私にとっては、彼はゴミよ」と心春は答えた。