第259章 一方的な圧倒

その瞬間、全員の視線が声のする方向へと向けられた。

仁藤心春は彼女に向かって歩いてくる人を呆然と見つめた。それは……卿介、卿介がなぜここに?

山本綾音もこの時、喜びに満ちていた。温井卿介を見かけただけでなく、温井朝岚も目にしたからだ。

温井家の兄弟が来たのなら、心春はもう大丈夫なはずだ!

温井卿介はあっという間に仁藤心春の前まで来ると、二人のボディーガードが心春の腕を掴んでいるのを見て眉をひそめ、すぐさま行動を起こした。一瞬のうちに、心春の腕を掴んでいたボディーガードの一人の手首を「バキッ」という音とともに折ってしまった。

この行動は、全員の予想を超えていた。

そのボディーガードは真っ青な顔で、折られたばかりの手首を押さえながら、必死に痛みを耐えて秋山瑛真の方を見た。