再会以来、仁藤心春は秋山瑛真がこのような目で彼女を見つめるのを見たことがなかった。
骨まで染みる冷たさと、稀に見る怒りを帯びていた。
坂下倩乃が水で流してしまったあの匂い袋のせいだろうか?あの匂い袋は...秋山瑛真のもの?しかも彼にとってとても大切なものだったの?
「お前が匂い袋を便器に捨てたのか?」秋山瑛真は一歩一歩、仁藤心春に近づいてきた。その端正な顔には怒りが満ちていた。
レストランの他の客たちは、この時すべて静まり返り、声を出す勇気もなかった。
山本綾音は緊張しながら親友の前に立とうとしたが、仁藤心春は彼女を自分の後ろに引っ張った。
「私じゃありません」彼女は相手をまっすぐ見つめて言った。
「お前じゃない?じゃあ誰だというんだ?他に誰がいる?」秋山瑛真は仁藤心春の前に立ち止まり、その声は骨を刺すような寒風のように冷たかった。