仁藤心春の顔が急に赤くなった。彼が指しているのは、彼女に彼を「抱く」という約束のことだろうか!
「わ...わかりました」夜だから、他人に顔が赤くなっているのが見えないのが幸いだった。
そう言って、仁藤心春は田中悠仁の手を引いて、急いで焚き火の方へ向かった。
温井卿介は椅子に座り、片手で顎を支えながら、焚き火の傍で田中悠仁と踊っているその姿を見つめていた。
動きはぎこちなく、ダンスの基礎もなく、姿も優美とは言えないが、火の光が彼女の頬を照らし、彼が今まで見たことのないような嬉しそうな表情を浮かべていた。
田中悠仁と一緒に踊るのが、そんなに楽しいのだろうか?
温井卿介は仁藤心春の笑顔を見つめながら、胸の中が何かに噛まれているような、じわじわとした痛みを感じていた。
嫉妬だろうか?