第269章 匂い袋の調合法

坂下倩乃が戦々恐々としているところで、秋山瑛真は再び口を開いた。「では、出て行きなさい」

坂下倩乃は大赦を得たかのように社長室を退出し、やっとのことで長い息を吐いた。先ほどの秋山瑛真の眼差しは、まるで人を食い殺すかのように恐ろしかった。

一方、秋山瑛真は坂下倩乃が去った後、椅子の背もたれに重々しく体を預け、今朝の古川山からの報告が頭をよぎった——

「会長、調査結果が出ました。あの匂い袋は、仁藤部長の仁藤心春が木村教授に贈ったものです。仁藤心春は当時、自分で木村教授のために作ったと言っており、匂い袋の香料の調合は、仁藤心春が在学中に木村教授の指導の下で作り出したものだそうです」

匂い袋の調合……彼が馴染みのあるあの香り、それは仁藤心春が大学時代に自ら研究して作り出したものだった。