すると、全員が声のする方を振り向いた。
個室のドアがいつの間にか開けられ、秋山瑛真が入り口に立っていた。
「秋、秋山会長……」先ほどまで下品な言葉を吐いていた松田忠信は、顔色が一瞬で青ざめ、慌てて立ち上がって手をこすりながら言った。「よくいらっしゃいました。来られるとわかっていれば、お迎えに行ったのに!」
秋山瑛真は松田忠信を冷ややかに見つめ、「迎えに来なくて良かったよ。でなければ、松田部長の素晴らしい発言が聞けなかったからね。どうだい?私と仁藤部長が関係を持っているとでも思って、お前も一枚かみたいのか?」
「いえいえ、とんでもない、ただの誤解です……」松田忠信は慌てて言った。
しかし彼の言葉が終わらないうちに、秋山瑛真は彼の頭を掴み、テーブルに激しく叩きつけた。
「バン」という音とともに、松田忠信の頭から血が滲み出し、彼は苦痛に顔を歪めて悲鳴を上げた。
「どうだ、松田部長、少しは気が済んだか?」秋山瑛真は冷たく言った。
「は、はい……申し訳ありません、どうか許してください……」松田忠信は必死に許しを請うた。
「聞こえないな!」秋山瑛真は再び松田忠信を引き上げ、床に投げつけ、足で胸を踏みつけた。「もっと大きな声で言え。気が済んだのか?」
松田忠信は痛みのあまり、ほとんど言葉も出なかった!
「まだ気が済んでないようだな。もっと続けようか!」秋山瑛真は言った。
バン!バン!バン!という音が、個室に鳴り響いた。
個室にいた誰もが、一言も発することができず、巻き添えを食らうのを恐れていた。
花村夏月は息をするのも怖くなるほど震えていた。彼女は秋山会長がこれほど容赦なく暴力を振るうとは思ってもみなかった!
秋山会長は明らかに仁藤心春のために立ち上がったのだ。もし秋山会長が、先ほど自分も松田忠信の言葉に同調していたことを知ったら……
花村夏月はそれ以上考えることもできなかった。
松田忠信がもう限界に近づいたところで、秋山瑛真はようやく手を止め、淡々と個室にいる黒川瞬也に命じた。「病院に連れて行け。ただし、医療費は出さなくていい。松田部長が自分で転んだだけだからな。人のせいにはできないだろう」
「は、はい、私が、私が自分で転んだだけです……」松田忠信は不明瞭な言葉で呟いた。