第276章 恩人の真相

「あの……」山本綾音は自分の恋人に注意を促そうとした。今はレストランの入り口なのに!

でも先ほどの不安げな表情を思い出すと、注意しようとした言葉は結局喉の奥に飲み込んでしまった。

まあいいか、抱きしめられるのなら。どうせ今日は病院の1階ロビーで既にパンダのように人々に見られたんだから、もう一度見られても構わない。

山本綾音は両手を上げて温井朝岚を抱き返した。「朝岚、私はあなたが好き、とても大好き。だから私があなたを嫌うなんて心配する必要なんてないの。そんなことありえないわ!これからは毎日、好きって言うわ。いい?」

彼の不安を和らげることができるなら、彼女は頑張ってそうするつもりだった。

「うん」温井朝岚は優しく答え、山本綾音をもう少し強く抱きしめた。

彼の綾音を、どうして愛さずにいられようか!