第299章 やはり嘘だった

「秋山会長がご所望の匂い袋ですが、もう出来上がりました。他に用事がなければ、私は先に失礼します」最後は仁藤心春の声が、この静寂を破った。

「あなたが自分の手で作ったのか?」秋山瑛真は匂い袋を手に取った。匂い袋から漂う香りは、とても懐かしく、かつて彼の恐怖と不安を和らげてくれた香りだった。

「ただの匂い袋ですから、他人の手を借りる必要もありませんでしょう」と仁藤心春は言った。

秋山瑛真は唇を引き締めて黙っていた。

彼女がオフィスを出ようとした瞬間、秋山瑛真が突然「仁藤部長、この匂い袋で何をするのか聞かないのですか?」と尋ねた。

「以前、秋山会長は答えられないとおっしゃいましたよね!」仁藤心春は振り返って答えた。

「今なら、あなたが聞けば、教えるかもしれない」と彼は言った。