第298章 私はあなたを愛しています

「瑛真のためよ」仁藤心春は隠すことなく答えた。

温井卿介は眉を少し上げ、瞳の色が沈んだ。「なぜ彼に匂い袋を作るの?まさか、今でも彼と仲直りしたいと思っているの?」

仁藤心春は手にしていた匂い袋を置き、温井卿介を見つめた。「もうずっと前からそんな気持ちはないわ。匂い袋を作るのは、彼が私の香料の調合を買いたいと言ってきたから。これはサンプルよ」

「サンプル?」彼は半分縫い上がった匂い袋を手に取った。「サンプルだけなら、お姉さんが自分で作る必要はないでしょう?会社の人に任せればいいのに」

「これは私個人の収入だから、会社の帳簿には載せないわ。他人に頼むわけにはいかないでしょう。それに、私にとってはすぐできることだし、時間もかからないわ」と心春は答えた。

「お姉さんはお金に困っているの?」温井卿介が突然尋ねた。