夢、またあの恐ろしい夢を見た!
夢の中で、彼は必死に走り続けていたが、後ろから追いかけてくる借金取りを振り切ることができず、暗い路地に追い詰められ、彼らに激しく殴られていた。
体中の骨が痛んでいた。
なぜ……なぜこんな目に遭わなければならないのか!
彼は自問自答を繰り返したが、答えは見つからなかった!
ようやく、殴っていた連中が手を止めた。終わるのか?彼はそう思った。
暗い路地に声が響いた。「金が返せないなら、せめて利子は払わなきゃな。お前の体はなかなかいい。体で返済してもらおうか……」
「あっ!」叫び声とともに、秋山瑛真は目を見開き、ベッドから飛び起きた。
全身は冷や汗でびっしょりだった。また夢を見た!あの忌まわしい光景の夢を!
いや、思い出したくない。思い出したくない記憶、必死に忘れようとしている過去!
彼は震える手で、ベッドサイドの引き出しを開け、中から匂い袋を取り出し、鼻先に当てて必死に香りを嗅いだ。
匂い袋の香りが鼻腔を包み込んだが……体の震えは止まらなかった。
まるでこの香りが……全く効果がないかのように!
なぜこんなことに?坂下倩乃が新しく作ってくれた匂い袋なのに、以前のものと全く同じはずなのに、違うのか?
以前は、悪夢を見るたびに、匂い袋の香りを嗅ぐだけで落ち着くことができた。恐怖と自己嫌悪は徐々に消えていったのに。
しかし今は……まだ震え続ける自分の手を見つめながら……突然、仁藤心春が作った匂い袋のことが頭に浮かんだ。
あの中の香り、なぜ彼が嗅ぐと安心できたのだろう?
坂下倩乃は、最初は仁藤心春が開発した香りを密かに真似て作ったと言っていた。
もし今、手元の匂い袋の中の香りが仁藤心春のものだったら、今の自分を落ち着かせることができるのだろうか?
……
仁藤心春は秋山瑛真のオフィスに立ち、お互いに見つめ合っていた。
先ほど古川山が彼女のところに来て、会長が用があると言っていたが、来てみると秋山瑛真は彼女を見つめるだけで、なかなか口を開かず、そのため今、社長室は静まり返っていた。
「えーと!」仁藤心春は咳払いをして、「会長は私に何かご指示でしょうか?」
秋山瑛真は薄い唇を噛んで、「匂い袋を作ってほしい」
「え?」仁藤心春は驚き、自分の耳を疑った。