山本綾音は目の前の男性の笑顔を少し呆然と見つめていた。
いつからだろう、彼の喜怒哀楽のすべてが、自分のためになっているような気がした。
父親の前で慌てて言った言葉だけで、彼はこんなにも嬉しそうになれるなんて!
この人は、いったいどれほど私のことを愛しているのだろう!
そのとき、山本綾音のお腹からグーッという音が鳴り、我に返った綾音は少し熱くなった頬に手を当てて、「もう、先にご飯食べに行きましょう。お腹空いちゃった」と言った。
「ええ」温井朝岚は優しく答えた。
今回、山本綾音は病院近くの普通の麺屋を選んだ。
「ここは私と母が何度か来たことがあるの。結構美味しいのよ!」綾音は言った。「何の麺が食べたい?」
「僕は来たことがないから、君が選んでくれていいよ」温井朝岚は答えた。