山本綾音と温井朝岚は同時に振り向いた。
温井朝岚は顔面蒼白で息を切らしながら二人の前に駆け寄り、温井澄蓮が山本綾音の襟を掴んでいた両手を引き離した。
「何をしているんだ?」温井朝岚は温井澄蓮を見つめながら言った。
温井澄蓮は言いたくても言えない気持ちになった。彼女は...何もしていない、ただ山本綾音に少し強い言葉を投げかけただけなのに。
でも、そう言ったところで、お兄さんは信じてくれるだろうか?
それに、もし山本綾音が先ほどの彼女の言葉をお兄さんに話したら、お兄さんはどう思うだろう?
温井澄蓮は不安な気持ちでいっぱいだった。
しかし意外なことに、山本綾音は「何でもありません。あなたの妹は私に何もしていません」と言った。
温井澄蓮は驚き、温井朝岚は眉をしかめて「綾音、もし何か遠慮があるなら...」