愛したかどうかに関係なく、彼女にとって人生は終わりに近づいていた。今の彼女が望むのは、ただ早く綾音を見つけ出し、綾音が無事でいることだけだった。
病院に着くと、仁藤心春は病室に入り、山本綾音の両親に会った。
山本お父さんは眠っていたが、山本お母さんはティッシュを手に持ち、涙を拭い続けていた。
「おばさま、警察はきっとすぐに綾音の居場所を突き止めるはずです。温井家も捜索の人員を出しています」と心春は山本お母さんを慰めた。
「ああ、どうして綾音がこんな目に遭うことになったのでしょう!あんな大きなショッピングモールで、監視カメラの下で連れ去られてしまうなんて!」と山本お母さんは悲しそうに言った。
「申し訳ありません!」と心春は深く謝罪した。
あの時、もし振り返って綾音の助けを求める声に気付いていれば、こんな結果にはならなかったはずだ!
「あなたのせいじゃありません!」と山本お母さんは涙ながらに言った。「悪いのは彼女を誘拐した人たちです。あなたも一生懸命やってくれているのは分かっています。でも……」
山本お母さんは一旦言葉を切り、ベッドで深く眠っている山本お父さんに視線を向けた。「この件は、まだ綾音のお父さんには話していないんです。ご存知の通り、お父さんの体調を考えると、綾音が誘拐されたと知ったら、どうなるか分かりません」
「分かります。綾音は以前、クライアントの写真に問題が発生して、相手が地方の方なので、処理しに行く必要があると説明することもできます」と心春は提案した。
山本お母さんは頷いた。「そうですね、とりあえずそう隠しておくしかないですね」しかし、もし綾音が見つからなければ、いずれ夫は真実を知ることになる。
昨日娘の失踪を知ってから今まで、山本お母さんは苦悩の中にいた。
「そうそう、もし誘拐犯が身代金を要求してきた時、あまりにも高額だった場合、あなた……お金を、少し貸していただけないでしょうか?私たち、今手元にそれほどお金がなくて」と山本お母さんは少し恥ずかしそうに言った。
夫の病気で出費が多く、保険からの補償金も出たものの、それほど多くはなかった。
もし娘の身代金が数百万円になるとなると、山本家ではすぐには用意できない金額だった。
「身代金のことはご心配なく、私が何とかします!」と心春は急いで答えた。