第319章 心春、許さない

仁藤心春は辞表を提出し、背を向けて立ち去った。

古川山は手の中の辞表を見つめ、まるで熱い芋を持っているかのような気分だった。

仁藤心春が辞めるなんて、でも秋山会長は...許さないはずだ。

結局のところ、秋山会長の仁藤心春に対する...古川山は心配そうな表情を浮かべた。長年秋山会長の側で働いてきた彼は、会長についてよく知っていた。少なくとも、会長がこれほどまでに一人の女性を気にかけるのを見たことがなかった。

口では仁藤心春を嫌っていると言いながらも、その目には隠しきれない関心が宿っていた!

一時間余り経って、社長室のドアが開き、秋山瑛真が出てきて、古川山に指示を出した。「後ほど市役所に行って、前回市と話し合った協力プロジェクトについて、もう一度協議する必要がある。」

「はい!」古川山は応じたが、少し躊躇した後、机の上に置いてあった辞表を秋山瑛真に差し出した。