監視室にいた人々は温井卿介を見て、皆緊張した様子を見せた。
支配人と他のスタッフたちは急いで近寄り、「温井二若様、いらっしゃいましたか。この...ショッピングモールでこのような事態が起きるとは思いもよりませんでした。今、手がかりを掴んでおります。すぐに警察に通報いたします!」
温井卿介は仁藤心春の前に直接歩み寄り、眉をひそめながら、蒼白な顔をした彼女を見て、「顔色が悪いね、山本綾音のことが心配なの?」と尋ねた。
仁藤心春はぼんやりと温井卿介の方を向き、しばらくしてようやく辛そうに頷いた。
「今、手がかりが見つかったんだから、警察に通報して、警察に任せればいい」と温井卿介は軽く言った。
結局、彼にとって山本綾音はただの無関係な人物に過ぎなかった。
傍らの支配人はすでに警察に通報の電話をかけており、状況を説明して通話を終えた後、温井卿介に向かって「二若様、警察の方がすぐに駆けつけるとのことです」と報告した。
温井卿介はそれを聞いて仁藤心春を見つめ、「よかった、警察がすぐ来るから、あとは警察に任せればいい。今は...」
「私は警察が来るまでここで待ちます!」と仁藤心春は断固とした態度で言った。
温井卿介は薄い唇を軽く噛み、目に不快感が浮かんだ。彼は彼女が他人のことをこれほど気にかけることが気に入らなかった。たとえその人が彼女の親友であっても。
すぐに警察が到着し、監視カメラの映像を確認し、仁藤心春の説明を聞いた後、直ちに捜査を開始し、山本綾音が失踪した衣料品店の店内の客の退去を始め、証拠収集を開始した。
仁藤心春は警察の作業が終わるまでずっと現場で待ち続けていた。
「ここにいても意味がないよ。もう遅いし、何か食べに行こう」と温井卿介が言った。
「でも今は全然食欲がないんです」と仁藤心春は答えた。
「食欲がなくても少しは食べないと。本当に体を壊すつもりなの?」と温井卿介は言った。
仁藤心春は一瞬固まり、その後深く息を吸って、「そうですね、少し食べないと」と言った。
彼女にはもう数ヶ月の命しか残されていなかった。今、綾音が失踪して、確かに自分の体を大切にしなければならない。そうしてこそ、また綾音に会えるのだから!