第328章 あなたは誰

「何ですって?温井朝岚が記憶喪失?」仁藤心春は驚いた表情で親友を見つめた。

彼女は今日スーパーで大量の買い物をして、親友の家の冷蔵庫を補充しようと思っていたのだが、来てみたらこんな衝撃的な話を聞かされた。

「正確に言えば、私に関する記憶だけを失ったの」山本綾音は苦々しく言った。「私に関することは全て忘れてしまって、彼にとって私は今、ただの無関係な他人でしかないの」

「温井朝岚に会ったの?」だからそれを知ったの?

山本綾音は首を振った。「いいえ、温井家のボディーガードに阻まれて朝岚には会えなかったわ。これは朝岚のお母さんと妹が私に言ったことよ」

「もしかして、彼らが嘘をついているんじゃない?温井朝岚に会わせないようにするため?」仁藤心春は推測した。

確かに、特定の人物の記憶だけを失うなんて、そんな確率はあまりにも低すぎる。