第327章 彼女を忘れる

「朝岚……目が覚めたの?」山本綾音は呟いた。

「え?」温井澄蓮は一瞬驚き、ガラス越しに中を覗き込んだ。そして彼女は目を見開いた。まるで...お兄さんの目が本当に開いたみたいだった!

「看護師さん、早く医者を呼んでください。お兄さんが目を覚ましたみたいです!」温井澄蓮は叫んだ。

数分後、医師と看護師、そして温井澄蓮と神谷妍音がICU病室に入り、山本綾音と仁藤心春はICU病室の外に立っていた。

山本綾音は緊張した表情で中を覗き込んでいたが、実際には何も見えなかった。

病床はカーテンで仕切られており、温井澄蓮と神谷妍音もカーテンの外に隔てられていた。

「そんなに心配しないで。温井朝岚が目を覚ましたんだから、大きな問題はないはずよ。温井家の財力と物力があれば、朝岚は必ず最高の治療を受けられるわ」仁藤心春は友人を慰めた。