温井朝岚は淡々と言った。「必要ないよ。今の私には彼女に対して何の感情もないし、これからも何の関係もないだろうから」
温井澄蓮は安堵のため息をつきながらも、思わず尋ねた。「でも、お兄さんは彼女についての記憶を取り戻したくないの?」
「忘れてしまったということは、それほど重要ではなかったということだ。本当に大切なものなら、忘れるはずがない」と温井朝岚は答えた。
温井澄蓮は黙り込んだ。
重要ではないって?でもあの時のお兄さんは、山本綾音をあれほど愛していたのに。もしいつか、お兄さんが山本綾音に関する全てを思い出したら、今日言ったことを後悔するんじゃないかしら!
この瞬間、温井澄蓮は突然山本綾音に同情を覚えた。確かに彼女とは相性が悪く、お兄さんを傷つけすぎたと思っていたし、以前はお兄さんと彼女が一緒にならないことを願っていた。