旦那様の召喚

一瞬にして、仁藤心春は鳥肌が立った。

本能的な恐怖が込み上げてきた。

彼は身を屈め、肩に浮かぶ鳥肌にキスをした。彼女の怯えた表情さえも可愛らしく感じられた。

できることなら、彼女をずっと自分の側に閉じ込めて、いつも一緒に連れて歩きたいと思った!

「お姉さんは怖いの?まだまだ時間はたっぷりあるから、私に恋をさせるかどうか、ゆっくり考えてみてね」彼の声が落ちると同時に、再び彼の体が彼女に覆い被さった。

「あぁ……」仁藤心春は思わず喘ぎ声を漏らした。

ゆっくり考えろって……何を考えろというの?今の彼女には何も考えられやしない!

一晩中の激しい行為の代償は、翌日の腰痛と背中の痛みだった。

仁藤心春が目を覚ました時には、すでに日が高く昇っており、温井卿介は部屋にはいなかった。

今頃は会社に行っているのだろう!

薄い布団をめくってベッドから降りると、両足がふらつき、危うく床に転びそうになった。

そうだ、昨夜は何度も求められて、最後は気を失ってしまったのだ。今は体がさっぱりしているところを見ると、後で綺麗にしてくれたのだろう。

仁藤心春は身支度を整え、少し食事を取り、服を着替えて綾音のところへ友人の様子を見に行こうと準備した。

しかし、別荘を出たところで数人に行く手を阻まれ、その中の一人が前に出て言った。「仁藤さん、温井おじいさまがお会いになりたいそうです」

「え?」仁藤心春は驚いて、目の前の人物が以前温井おじいさまに会った時に側にいたボディガードだと気付いた。

しかし……温井おじいさまは今昏睡状態のはずでは?

仁藤心春の困惑を察したのか、相手は言った。「仁藤さんがおじいさまにお会いになれば、すべてご理解いただけると思います」

仁藤心春は周りの状況を見渡した。左右前後を全て取り囲まれており、明らかに彼女が拒否しても強制的に連れて行かれるつもりのようだった。

「卿介に電話してもいいですか?」彼女は言った。心の中に不安が募っていた。

「申し訳ありませんが、それはできません」相手は笑みを浮かべて言った。「ですが、おじいさまのところで、すぐに二少爺にお会いできるはずです」

そう言いながら、相手は車の後部座席のドアを開けた。

仁藤心春は深く息を吸い込んで車に乗り込み、温井おじいさまが入院している病院に向かった。