彼女に影響されることはもうない

温井卿介の主治医である福本正道は、再び温井卿介に会った時、彼がこのような激しい頭痛に苦しんでいる姿を見るとは思わなかった。

「どうしたんだ?頭痛の症状は、もう治っていたはずじゃないのか?」福本正道は尋ねた。

温井卿介は痛みを必死に耐えながら、苦しそうに言った。「私もそう思っていました。」しかし今、頭の痛みの程度は、彼の「思い込み」が単なる幻想に過ぎなかったことを告げていた。

福本正道は目の前の温井卿介を見つめた。額には汗が滲み、髪は汗で濡れ、血の気のない蒼白な顔色で、唇さえも青紫色を帯びていた。

そして、深くしわを寄せた眉と、こめかみに浮き出た青筋は、彼が今、激しい痛みに耐えていることを示していた。

福本正道は温井卿介の痛みへの耐性を知っていた。かつて刺されて出血が止まらない状態でも、平然とした表情を保っていた。あの時、彼はまだ十代の少年に過ぎなかった。

その時も、福本正道は温井卿介の意志の強さに感心していた。

今の温井卿介のこの様子を見れば、この頭痛がどれほど激しいものかが想像できた。

「まずは検査をさせてもらおう」と彼は言った。

検査結果が最速で福本正道の手元に届いた時、彼はその報告書を見たが、特に異常は見つからなかった。

「半年前の検査結果とほとんど変わらないな。理論的に言えば、今のあなたの体調で、このような激しい頭痛が起きる理由はないはずだ」と福本正道は困惑して言った。

「では、なぜこんなに痛むんでしょうか?」温井卿介は尋ねた。

既に鎮痛剤を服用していたにもかかわらず、頭部はまだ隠隠と痛みを感じていた。

「私の見立てでは、心理的な要因の可能性が高いですね」と彼は言った。

「心理的な要因?」温井卿介は一瞬固まった。

「今日、何かショックを受けたことはありませんか?あるいは何か変化が?」福本正道は尋ねた。

温井卿介の瞳の色が沈み、薄い唇はほとんど一直線になったが、福本正道の質問には答えなかった。

その瞬間、福本正道は自分の推測が当たっていることを悟った。

「もし心理的な問題であれば、薬物療法だけでは根本的な治療は難しいでしょう。心理カウンセリングも必要になると思います…」

「必要ありません!」温井卿介は遮った。

「しかし…」