彼女に影響されることはもうない

温井卿介の主治医である福本正道は、再び温井卿介に会った時、彼がこのような激しい頭痛に苦しんでいる姿を見るとは思わなかった。

「どうしたんだ?頭痛の症状は、もう治っていたはずじゃないのか?」福本正道は尋ねた。

温井卿介は痛みを必死に耐えながら、苦しそうに言った。「私もそう思っていました。」しかし今、頭の痛みの程度は、彼の「思い込み」が単なる幻想に過ぎなかったことを告げていた。

福本正道は目の前の温井卿介を見つめた。額には汗が滲み、髪は汗で濡れ、血の気のない蒼白な顔色で、唇さえも青紫色を帯びていた。

そして、深くしわを寄せた眉と、こめかみに浮き出た青筋は、彼が今、激しい痛みに耐えていることを示していた。

福本正道は温井卿介の痛みへの耐性を知っていた。かつて刺されて出血が止まらない状態でも、平然とした表情を保っていた。あの時、彼はまだ十代の少年に過ぎなかった。