もう二度とここには来ない

彼がこのように身を乗り出すと、強い圧迫感を与え、その深い黒瞳は、この瞬間、彼女を完全に見通そうとしているかのようだった。

仁藤心春は、横に垂れた両手で、無意識にシーツを掴んでいた。

「ただ疲れていただけで、気を失っただけです」と心春は答えた。

「最近、これが初めての鼻血じゃないだろう。それに、血液凝固機能が悪く、白血球数も正常値よりもかなり高い。聞かせてくれ、一体どんな病気なんだ！」と秋山瑛真は追及した。

病院でより詳しい検査をさせたものの、それらの結果はすぐには出ず、少なくともあと3日は彼女の検査報告書を受け取れないだろう。

しかし、彼女が昏睡していたこの数時間、彼は彼女の蒼白い寝顔を見ながら、心の中で恐怖が増していった。

まるで、彼が最も直面したくないことが起こりそうな予感がするかのように！

「私がどんな病気なのか、あなたに告げる必要はないでしょう」と心春は答えた。

「ただ知りたいんだ。以前に健康診断を受けたことがあるのか、今の体調の異常に気付いているのかを！」と瑛真は彼女を見つめながら言った。

心春は相変わらず淡々とした表情で、「私の体のことは、私自身がわかっています。病院に連れて来てくれてありがとう。医療費は私が負担します。他に用がないなら、秋山様はお帰りください。もう遅いので、私は休みたいです！」

この時、窓の外は深い夜の闇だった。

秋山瑛真の表情は、窓の外の夜と同じように暗かった。

「わかった、帰る。仁藤心春、二度と助けなどしないからな！」瑛真はそう言って、病室を出て行った。

心春は疲れ果てたように、ベッドに横たわった。目が覚めても、体は依然として重たい感じがした。

鼻血で気を失うほどになるとは思わなかった。後期に入るにつれて、体の衰えが激しくなっているようだ。あとどれくらい持ちこたえられるかもわからない。

死は、もう怖くはなかった。ただ残念なのは、卿介との関係が、紆余曲折を経ても、結局このような結末になってしまうことだった。

おそらく最初から、彼らは再会するべきではなかったのだろう。

再会していなければ、これほどの苦しみもなかったはずだ！

明日は別荘に行って、そこに置いてある私物を片付けて、元の住まいに戻らなければならない。

温井卿介との関係は、彼女が死ぬその日まで、もう二度と交わることはないだろう！