仁藤心春の体が急に硬直し、こわばった首を音のする方向へ向けた。
階段の角に、山本綾音が立っており、真っ青な顔で見つめていた。
「綾音、どうして...ここに...」仁藤心春は掠れた声で言った。
山本綾音は急いで前に出て、親友の肩をつかんだ。「一体どういうこと?秋山様はどうして心春の命があと3ヶ月もないって言ったの?病気なの?どんな病気?」
仁藤心春は唇を固く結び、目には戸惑いの色が浮かんでいた。
彼女はこんな形で綾音に病気のことを知られるとは思っていなかった。本来なら、自分が死んでから何年も経って、ゆっくりと綾音に知らせるつもりだった。
「心春、話してよ!」山本綾音は追及した。
仁藤心春はまだ唇を固く結んでいた。
山本綾音は横にいる秋山瑛真の方を向いた。「秋山様、一体どういうことですか?心春はどんな病気なんですか?」
秋山瑛真が口を開こうとした時、仁藤心春が「私が話します!」と言った。
彼女は親友を見つめ、深く息を吸った。「綾音、私は白血病の末期で、あと3ヶ月もないの!」
山本綾音の涙が、一気に溢れ出した。
白血病末期、どうしてこんなことに?!
心春と知り合ってから、彼女が一歩一歩自分の力で頑張っているのを見てきた。まるで全力で生きて、奮闘しているようだった!
でも、そんな人の命が、突然終わってしまうの?
「治療して、命を延ばすことはできないの?今は医学も発達してるし、ちゃんと治療すれば、きっと...」
「綾音!」仁藤心春は親友の言葉を遮った。「私は最後の時間を、病院で何度も化学療法を受けながら過ごしたくないの。命の最後を病院で消耗させたくない。まだ動けるうちに、普通の生活を送りたいの。それで十分なの!」
山本綾音はその言葉を聞いて、さらに激しく涙を流した!
心春が今こうしてちゃんと目の前に立っているのに、どうしてあと3ヶ月もないなんてことがあり得るの?3ヶ月後には、もう心春に会えなくなってしまうの?
「仁藤心春、そう簡単に死ねると思うなよ」突然秋山瑛真が声を上げた。「お前は俺にあれだけの借りがある。そう簡単に死なせてやるわけないだろう?たとえあと3ヶ月しか残されていなくても、普通の生活なんてさせない!」
怒りと不安が入り混じった感情が、彼の胸の中で渦巻いていた。まるで早急に発散口を見つける必要があるかのように!