恩人は誰

秋山瑛真は冷たい表情で山本綾音を見つめ、手を上げて綾音に向かって振り下ろそうとした。

「やめて!」仁藤心春は急いで相手の振り下ろそうとする手を止めた。「綾音はただ感情的になっただけよ。私が彼女の代わりに謝ります!」

「謝る?仁藤心春、お前にそんな資格があると思っているのか?」秋山瑛真は冷たく言った。何年も誰かにこんな風に殴られたことはなかった。「山本綾音が今日こんな行動に出たからには、その結果を受け入れるべきだ!」

「受け入れるわよ、大したことじゃないわ!」山本綾音は今や開き直っていた。「心春、私のために謝らなくていいの。私は彼を殴りたかったの。どうしてそんなことが言えるの?どうしてあなたにそんなことができるの、どうして……」

山本綾音は親友のことを深く憤っていた。大学時代、心春が「ジェイ」を助けるためにどれほどの苦労をしたか思い出した。多くの人が彼女は騙されていると思い、見知らぬ人にお金を送るべきではないと言ったのに、それでも彼女は信じ続けた。

しかし今、「ジェイ」は心春にそんな言葉を投げかけ、さらには心春の命が危ういときに、山本綾音にはとても受け入れられなかった!

「なぜ仁藤心春にそうしてはいけないんだ?山本綾音、お前は本当に滑稽だな!」秋山瑛真は冷たく言った。「俺と仁藤心春の間のことは、お前には何もわかっていない!」

「わかっていないのはあなたよ!」山本綾音は悲しみと怒りを込めて言った。「心春がいなければ、あなたは借金取りに殺されていたはずよ。今日があると思う?彼女はあなたが一番困っているときに手を差し伸べたのよ。そのときは誰だかも知らない、ただの見知らぬ人だと思っていたのに、あなたの投稿を見ただけで、苦労して助けてあげたの。彼女には離ればなれになった弟がいて、見つけられないって。もし弟が困っているなら、誰か優しい人が助けてくれたらいいなって思っていたのよ!」

山本綾音は声を詰まらせた。一方、秋山瑛真は完全に呆然としていた。「今の……何だって?」

「心春が言っていた弟というのは、あなたのことでしょう!でも心春はそのとき知らなかった、彼女が援助していたのは……」

「綾音!」仁藤心春は遮った。「もういいわ、もう言わないで!」