かつての絵

温井朝岚は空っぽのアトリエを見つめていた。画材はまだ置いてあるものの、不思議なことに、アトリエには一枚の絵も飾られていなかった。

こんなはずじゃない、アトリエには絵が所狭しと飾られていて、そこには全て……が描かれているはずだ。

突然、頭部に鋭い痛みが走り、思わず眉をひそめ、片手で頭の片側を押さえた。

これも記憶喪失の後遺症なのだろうか?何かを忘れてしまい、それを思い出そうとすると、このような痛みが襲ってくる。まるで、もう考えるなと警告されているかのようだ!

「お兄さん、どうして……ここに?」温井澄蓮の声が突然響いた。

温井朝岚は、アトリエの入り口に立つ温井澄蓮の方を向いた。「なぜだめなんだ?ここにいちゃいけないのか?」

「そうじゃないわ。でも、ここには何もないし、お兄さんは退院したばかりだから、部屋で休んだ方がいいわ」温井澄蓮は急いで言った。