1つの部屋で寝る

「じゃあ、私を追い出してもいいわ。でも私はあなたの部屋の外で、明日出てくるまで待ち続けるよ」秋山瑛真は断固とした態度で言った。とにかく、彼は自分なりの方法で彼女の安全を確認するつもりだった。

仁藤心春は困り果てた。もし本当に秋山瑛真が彼女のホテルの部屋の前で一晩中見張りをするなら、この階の他の人々がどう思うか分からない。

彼女はそれほど目立ちたくなかった。

「じゃあ...今日はここにいていいわ。夜は...えっと、ソファーで寝て」結局、この部屋にはベッドが一つしかなく、分けて寝ることはできない。

「わかった」彼はそれに特に異議を唱えなかった。

仁藤心春は電話をかけ、ホテルのフロントに布団をもう一組頼んだ。

秋山瑛真はソファーに布団を敷いた。仁藤心春が今回選んだホテルは、まあまあ良い四つ星ホテルだったが、部屋はそれほど広くなく、当然ソファーも普通の二、三人掛けのものだった。秋山瑛真の身長では、そこに寝るのは窮屈そうだった。

しかし秋山瑛真は一言も不満を漏らさず、ただ静かにソファーで体を丸めていた。

仁藤心春はベッドに横たわり、部屋の明かりは消えていたが、窓から差し込む月明かりで、ソファーに横たわる彼のシルエットを見ることができた。

このような秋山瑛真の姿は、ずっと昔、彼女が風邪で熱を出した時、目が覚めた時に彼が彼女の部屋の床で丸くなって寝ていた時のことを思い出させた。

その時、彼女は不思議に思って、なぜ彼女の部屋の床で寝ているのかと尋ねた。

すると彼は真面目な顔で、彼女が目を覚まさないかもしれないと心配で、見守っていたかった、そうすれば彼女が目を覚ました時に、真っ先に気付けると答えた。

その時、彼女は彼がとても可愛らしく思えた。まるで子犬のように。こんな弟がいて、彼女は本当に幸せだった。

彼の存在のおかげで、彼女は徐々に卿介との別れの痛みを乗り越えることができた。

そして今、彼は子供の頃のように彼女の側で見守っている。

「なぜまだ寝ないの?」彼女が考えていると、突然秋山瑛真の声が響いた。

仁藤心春は驚いた。「あなたまだ起きてたの?」

「それは私が聞きたいことだよ。今は早く休むべきなのに、ずっと私を見ているだけじゃないか」秋山瑛真は言った。