仁藤心春は翌日、親友に会ったとき、親友は明らかなパンダ目をしていた。
「昨日はよく眠れなかったの?」と仁藤心春は尋ねた。
「うん」山本綾音は頷いた。昨夜は一晩中、温井朝岚のことばかり考えていた。
理性が温井朝岚のことを考えるなと何度も自分に言い聞かせても、人の思考は時として制御したくても制御できないものだった!
「お父様の病状に何か変化があったの?」と仁藤心春は尋ねた。
「いいえ、父は相変わらずよ。私は...ただあなたの手術のことを考えていただけ。医師から骨髓移植はいつ始まるって聞いた?」山本綾音は話題を変えた。
「三日後よ」と仁藤心春は言った。「でも厳密に言えば、二日後から準備が始まるの。だから自由に動けるのはあと二日だけ。悠仁に会いに行きたいの」
「え?」山本綾音は驚いて、椅子から飛び上がりそうになった。