不可能

「私が追いかけなければ、本当にチャンスがなくなってしまうと思ったから」温井朝岚は苦笑いを浮かべた。「私が転んだのを見て、あなたは立ち止まってくれた。それは、まだ私のことを少しは気にかけているということじゃない?」

山本綾音は静かに目を伏せた。「結局、あなたは私が本当に愛した人だったから。あなたのことを手放すには、時間がかかるの。少しずつ手放していく過程が必要で、だから今でもまだ気にかかるのは当然のこと。もう少し時間が経てば、完全に手放せるはず」

時間は、すべてを少しずつ癒してくれるものだ。

どんなに激しい感情だったとしても、いつかは穏やかなものになるはずだ。

「ダメ!」温井朝岚は突然山本綾音を抱きしめ、哀願するような声で言った。「完全に手放さないで、綾音、お願い、完全に手放さないで!」