挫折

山本綾音は困惑した表情を浮かべ、「心春が悠仁に会いたがっていて、私が…うっかり口を滑らせてしまったの」

秋山瑛真は薄い唇を引き締め、視線を仁藤心春に向けた。「悠仁に会いたいなら、手術が終わってから会えます。今は手術の準備をしなければならないので、会うのは適切ではありません」

そう言いながら、彼は彼女の肩を抱いた。「まずはベッドに戻りましょう。手術の準備まであと2日しかありません。あなたの体調に少しでも異常があってはいけないのです」

仁藤心春は秋山瑛真の手を払いのけた。「あなたは悠仁に骨髄提供を強要したの?」

秋山瑛真の表情が一瞬変化し、目の前のアーモンド形の瞳と視線が合った。

彼は知っていた。田中悠仁が生きている限り、この件はいずれ彼女に知られることになると。

ただ、彼女にはもう少し後で知ってほしかった。少なくとも手術が終わってからにしたかった。