仁藤心春は、山田流真が意図的に時間を引き延ばしているような感覚を覚えた。時折、彼女が少し顔を背けると、目の端で後ろを見やると、山田流真が時々北西の方向を見ているのが見えた。
しかし、北西には何もなく、ただ静かな海面があるだけだった。彼は一体何を待っているのだろうか?
同時に、仁藤心春の胸元の特殊なボタンを通して現場の様子を見聞きしていた車内の山本綾音は、緊張した様子で秋山瑛真に尋ねた。「どうしてまだ行動を起こさないんですか?警察に狙撃手がいるって言ってたじゃないですか?」
この状況では、彼女から見れば、山田流真を射殺したとしても、それは彼自身が招いたことだった!
「警察が容疑者を射殺するにしても、むやみに実行できるわけではない。現時点で山田流真は過激な行動を取っていないから、警察も動けないんだ」と秋山瑛真は説明した。