あれは……悠仁!
仁藤心春は胸が凍りつくような思いをした。今の悠仁は両手を縛られ、体が沈み続けていた。見たところ、彼は全く抵抗する様子もなく、ただ自分の体が沈んでいくのを放任しているようだった。
彼はもう溺れてしまったのか?それともまだ意識があるのか?
仁藤心春は焦りながら考え、必死に田中悠仁の方へ泳いでいった。
しかし、海中の潮流と波のせいで、彼女の努力はほとんど無駄になってしまっていた。
幸い、田中悠仁は元々彼女からそれほど遠くなかった。波の動きが、逆に彼を彼女の方向へ押し寄せてきた。
近づいた……もう少し!
仁藤心春の手が田中悠仁に触れた瞬間、彼女の体は震えていた。
おそらく……悠仁を救える機会は、今しかないかもしれない!
彼女は懸命に田中悠仁を支えながら、海面に向かって泳ぎ始めた。