人を愛したことは骨身に刻まれる

空気は、微妙な凝滞を見せていた。

山本綾音は心臓が激しく鼓動しているのを感じ、温井朝岚の答えを待っているようだった。

彼は……どんな答えを返すのだろうか?

「そうだ、私は忘れた。でも、綾音に関する過去を忘れたからといって、その気持ちまで忘れたわけではない。たとえ忘れたとしても、この気持ちが私に告げている。私は彼女を愛している。卿介、もし本当に誰かを愛しているなら、分かるはずだ。何が起きても、やはり愛し続ける。なぜなら、その感情は骨身に刻まれているものだからだ!」温井朝岚は厳かに答えた。

山本綾音は驚いた表情で温井朝岚を見つめ、突然目が潤んできた。

ぷすっ!

鋭い剣先が、直接温井朝岚の肩に突き刺さった。

温井朝岚は痛みで呻いたが、一歩も後ろには下がらず、依然として山本綾音の前に立ち、守護者の姿勢を保っていた。