手が……冷たくなっていく。
彼のキスのせい?それとも彼の言葉のせい?
仁藤心春はまつ毛を震わせ、手を引っ込めようとしたが、温井卿介の指が彼女の手をしっかりと掴んでいて、引っ込めることができなかった。
「ん?」彼は鼻声を上げながら、まだ彼女の答えを待っていた。
「あなたが欲しかったのは寶石の劍じゃないの?あの時、私は既に寶石の劍をあなたに渡したわ。だから、私があなたを掴んだかどうかは、もう重要じゃないはず」彼女は答えた。
彼は彼女の手のひらにキスをする動作を止め、「寶石の劍?最後に俺が欲しかったのは寶石の劍だと思ってるのか?」
「まさか、私のために海に飛び込んだとでも?私を助けに来たっていうの?」仁藤心春は皮肉を込めて言った。
しかし温井卿介の表情は、異常なほど真剣だった。「もしそうだとしたら?」
彼女は息を詰まらせた。「誰も玩具のために命を懸けたりしないわ。ましてやあなたが」
「そうだな。俺もそう思っていた。でも、意外にもできた。仁藤心春、お前のためなら、俺は命を懸けることができるんだ」漆黒の瞳が、じっと彼女を見つめていた。
心臓が激しく震え、彼女は驚いて彼を見つめた。彼の口からこんな言葉が聞けるとは、思ってもみなかった。
「だから、あの時、なぜ俺を掴まなかった?」彼は再び先ほどの質問を繰り返した。これは三年間、彼が必死に答えを求めていた問いでもあった。「あの時、お前は既に寶石の劍を俺に渡していた。お前の手は空いていた。だから、俺を掴んでいれば……」
「あなたに借りを作りたくなかったから」彼女は言った。
「何?」今度は彼が驚いて固まった。
仁藤心春は目を伏せ、彼に握られている手を見つめた。「もうあなたに何も借りたくなかった。もう関わり合いになりたくなかった。寶石の劍は約束通り返した。それで十分だった。それに、あの時の状況で、私があなたを掴んでいたら、あなたにとってもっと危険だったはず。二人とも死ぬくらいなら、一人が死んだ方が得だと思って」
「得?」彼の冷たい声が彼女の耳に届いた。「得だと?はっはっ……はははは……さすがは俺のお姉さんだ。はははは……」
彼は怒りのあまり笑い出し、その笑い声はどんどん大きくなっていった。