仁藤心春は軽く笑って、「そうかもしれないわね」と言った。
その夜、展志ちゃんが寝た後、心春は書斎に行き、パソコンの前で仕事をしている温井卿介を見て、部屋を出ようとした。
「どうして来たのにもう帰るんだ?」と温井卿介が声をかけた。
「お仕事中だから、終わってからまた来るわ」と彼女は答えた。
「忙しくない」と彼は言った。「何か用事があるのか?」
「展志ちゃんの幼稚園の手続きは全部済んだわ。明日から毎日、私が送り迎えをするの」と彼女は言った。今は一緒に住んでいるのだから、とにかく彼にも伝えておく必要があった。
「明日からもう幼稚園に通わせるのか?」と温井卿介は尋ねた。
「うん」と彼女は答えた。
「じゃあ、明日は一緒に行こう」と彼は言った。
「いいえ、私一人で送っていくわ」と彼女は慌てて言った。