仁藤心春は首筋に灼熱を感じた。
温井卿介の唇が彼女の首筋に触れ、優しく吸い付いていた。時折、歯が彼女の柔らかな肌を軽く擦り、まるで吸血鬼に襲われているかのような錯覚すら覚えた。彼の歯がいつ首筋を噛み破り、狂ったように血を吸い取るのかと思わせるほどだった。
「お姉さんはそう言って、私が怒るのを恐れないのですか?」彼は囁くように言った。もし彼女の頸動脈を噛み切れば、彼を苦しめるそんな言葉をもう聞かなくて済むのではないかと。
でも...できない。
今の彼には、彼女に少しの傷すらつけることができないのだ。
「でも私は嘘をつきたくないの」心春は言った。彼の側にいることはできても、演技をして彼を愛するふりをすることはできない。「あなたが言ったでしょう。嘘をつくなら、一生涯嘘をつき通さなければならない。でも本当に誰かを愛しているか、愛していないかは、一生涯隠し通すことはできないわ」