仁藤心春は驚いて温井卿介を見つめた。「まさか、こんなに小さな子どもをロケットに乗せるつもりじゃないでしょうね!」
温井卿介は顔を上げて彼女を見ると、突然くすっと笑った。「ハハハ、こんなに小さな子どもが本当に宇宙にロケットで行けると思うの?」
「……」仁藤心春はようやく、自分がばかげたことを言ったことに気づいた。
でもこれも温井卿介のせいだ。彼が言ったことはいつも現実になるような印象を与えるから。
「じゃあ、あなたが言った『行く』というのは?」
「市内の宇宙館に行くことだよ。まさか市内に宇宙館があることを忘れたんじゃないだろうね」と温井卿介は言った。
仁藤心春はようやく塩浜市に確かに宇宙館があることを思い出した。それもかなり昔からあって、彼女が小さい頃にはすでにあった。以前、彼女と温井卿介はその宇宙館に行ったことがあった。