仁藤心春は驚いて温井卿介を見つめた。「まさか、こんなに小さな子どもをロケットに乗せるつもりじゃないでしょうね!」
温井卿介は顔を上げて彼女を見ると、突然くすっと笑った。「ハハハ、こんなに小さな子どもが本当に宇宙にロケットで行けると思うの?」
「……」仁藤心春はようやく、自分がばかげたことを言ったことに気づいた。
でもこれも温井卿介のせいだ。彼が言ったことはいつも現実になるような印象を与えるから。
「じゃあ、あなたが言った『行く』というのは?」
「市内の宇宙館に行くことだよ。まさか市内に宇宙館があることを忘れたんじゃないだろうね」と温井卿介は言った。
仁藤心春はようやく塩浜市に確かに宇宙館があることを思い出した。それもかなり昔からあって、彼女が小さい頃にはすでにあった。以前、彼女と温井卿介はその宇宙館に行ったことがあった。
今度は展志ちゃんを連れて行くつもりなのだろうか?
「宇宙館って何?本当の宇宙と同じなの?」小さな子は興奮した目で仁藤心春を見つめた。
仁藤心春は優しく微笑んで、娘の小さな頭をなでた。「宇宙にとても似ているのよ。展志ちゃんはまだ小さいから本物の宇宙には行けないけど、宇宙館に行けば宇宙がどんな感じなのか体験できるわ」
「行きたい、行きたい!」小さな子はすぐに叫んだ。
「じゃあ、展志ちゃんの病気が良くなったら、宇宙館に行きましょうね」と仁藤心春は言った。
数日後、小さな子の病気が良くなるとすぐに、彼女は我慢できずに宇宙館に行きたいとせがんだ。そこで温井卿介と一緒に展志ちゃんを連れて宇宙館に行った。
ただ、今の宇宙館は彼女の記憶にある宇宙館とはかなり違っていた。
多くの場所がリニューアルされ、館内の体験設備も更新されて、新しい体験が増えていた。仁藤心春自身も興味をそそられるものがたくさんあった。
小さな子はさらに好奇心旺盛で興奮し、口からは次々と「なぜ?」という質問が飛び出した。
最初は仁藤心春が答えていたが、後半になると彼女も答えられない質問が出てきて、スマホを取り出して検索しようとしたところ、温井卿介が先に答えを言い始めた。
その後も小さな子の「なぜ?」という質問に、温井卿介は一つ一つ丁寧に、そして忍耐強く答えていった。