「本当は好きじゃなかったけど、今日は少し好きになったよ」と小さな子が言った。
「お話をしてくれたからかな?」と仁藤心春が尋ねた。
しかし小さな子は首を振って、「温井おじさんがママに布団をかけてあげたからだよ」と答えた。
「え?」心春は驚いた表情を浮かべた。
小さな子は言った。「温井おじさんが私を部屋から連れ出した時、ママが布団を蹴っちゃったの。だから温井おじさんがママに布団をかけてあげたの。とても優しくかけてたよ。布団の端も丁寧に入れてた。ママも展志ちゃんの布団の端を入れてくれるよね。ママはそれが展志ちゃんを愛してるからだって言ってた」
小さな子は一度言葉を切り、とても真剣な様子で結論を述べた。「だから温井おじさんもママのことをとても愛してるんだね。私はママを愛してくれる人が好きだから、少し温井おじさんのことも好きになったよ」