温井卿介の決断

「そうですね、面白いでしょう?私はまだ露店を出したことがないんですから」温井卿介は微笑みながら言った。

「……」彼が露店を出す光景がどんなものか、彼女には想像しづらかった。

展志ちゃんは温井卿介の肯定的な返事を聞いて、すぐに嬉しそうに言った。「やったー!これで二人も一緒に露店を出してくれるんだね。たくさんたくさん物を売って、たくさんお金を稼いで、ママの病気を治すの!」

笑顔いっぱいの娘の顔と、その子供らしい言葉を見て、仁藤心春の胸は温かくなった。

娘を持つというのはこういう感覚なのだろう。この小さな体は彼女に頼っているのに、いつの間にか、この子が彼女の精神的な支えになっていた。どんな困難に直面しても、この子がいれば何も問題ないように思えた!

「うん、ママは展志ちゃんがたくさんたくさんお金を稼いで、ママの病気を治してくれるのを待ってるよ。ママの病気はきっと良くなるわ!」仁藤心春は言った。