温井卿介の決断

「そうですね、面白いでしょう?私はまだ露店を出したことがないんですから」温井卿介は微笑みながら言った。

「……」彼が露店を出す光景がどんなものか、彼女には想像しづらかった。

展志ちゃんは温井卿介の肯定的な返事を聞いて、すぐに嬉しそうに言った。「やったー!これで二人も一緒に露店を出してくれるんだね。たくさんたくさん物を売って、たくさんお金を稼いで、ママの病気を治すの!」

笑顔いっぱいの娘の顔と、その子供らしい言葉を見て、仁藤心春の胸は温かくなった。

娘を持つというのはこういう感覚なのだろう。この小さな体は彼女に頼っているのに、いつの間にか、この子が彼女の精神的な支えになっていた。どんな困難に直面しても、この子がいれば何も問題ないように思えた!

「うん、ママは展志ちゃんがたくさんたくさんお金を稼いで、ママの病気を治してくれるのを待ってるよ。ママの病気はきっと良くなるわ!」仁藤心春は言った。

5年以内に病状が再発しなければ、基本的に治癒したとみなされ、その後再発する確率は極めて低くなる。そうすれば薬を止めて、普通の生活を送ることができるのだ!

仁藤心春は娘を抱きしめ、頬にキスをした。それに展志ちゃんはくすくすと笑った。

温井卿介はこの光景を見て、目が微かに動いた。

彼女が最も大切にしているのはこの子供なのだろう。だから彼もこの子供の機嫌を取ることをいとわない。彼女との距離を縮めるためだけに。

たとえ他人が子供を利用するのは卑劣だと思っても構わない。彼女に再び彼を愛させることができるなら、何でもするつもりだった!

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温井グループのオフィスで、渡辺海辰は目を丸くして、机の上に開かれた箱の中身を見つめていた。

これらの品物は……まあ、彼は知っていた。スライムクレイ、デコカード、そして小さな付属品たち。小さな樹脂製の漫画キャラクターの飾り、小さなパール、キラキラしたスパンコールなど、多くの子供たちがDIYで好むものだ。親戚の家に女の子がいて、その子が2年前にこれで遊んでいたので、当時彼はしばらく見ていたのだった。

しかし、これらのものは二少爺とは何の関係もないはずだ!

もしかして……二少爺はスライムクレイやデコカードDIY業界に参入する計画なのか?