「いつか、彼から離れられるはずよね」仁藤心春は小さな声で言った。
山本綾音は友人の今の寂しげな表情を見て、心に何か重いものが乗っているような気がした。
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温井朝岚と山本綾音の結婚式は、温井家の基準から言えば、それほど盛大なものではなく、招待された人数も実際にはそれほど多くなかった。
本来なら温井朝岚の意向では、綾音に盛大な結婚式を贈りたかったのだが、山本綾音はあまり盛大な結婚式を望んでいなかった。彼女が望む結婚式は、大勢の人が参加する必要はなく、温かい雰囲気であればそれでよかった。
そのため、この結婚式には温井朝岚と山本綾音は親族や友人だけを招待した。
結婚式は一般公開されず、記者の入場も許可されなかった。多くの記者が温井卿介が付添人を務めることを知り、何とか入って取材しようとしたが、最終的にはすべて拒否された。
付添人を務める仁藤心春は、結婚式の間ずっと山本綾音の側にいて、友人と一緒に挨拶を交わし、友人がレッドカーペットの上を一歩一歩温井朝岚に向かって歩いていくのを見守った。
今日の綾音が温井朝岚と結ばれるまでには、本当に大変な道のりだった。
二人の間にはたくさんの困難があったが、本当に愛し合う二人は、どんなことがあっても、ついに一緒になった。
綾音と温井朝岚が指輪を交換し、皆の前で誓いを立てる様子を見ていると、仁藤心春の目は思わず潤んできた。
周りでは、新郎新婦のために拍手が沸き起こった。
温井朝岚の両親は、この嫁を気に入っていなかったが、この瞬間は笑顔を作り、他の人々と一緒に拍手をせざるを得なかった。
温井澄蓮は目を赤くしながら兄と未来の義姉を見つめていた。彼女は心から兄の幸せを願っていた!
兄がいなければ、今の自分はなかった。兄が自分の愛する人に出会えたのは、本当に素晴らしいことだった!
そして、この数年で彼女も山本綾音を認めるようになった。この女性なら、きっと兄に幸せをもたらしてくれるだろう。
仁藤心春も同じように拍手をし、友人に最も誠実な幸せを送った。
「綾音、幸せになってね!」彼女は言った。
二人のうち、一人でも幸せになれば、それでいいのだろう!
その後、仁藤心春は新婦と一緒に乾杯し、ゲストと挨拶を交わした。一通りの乾杯が終わると、仁藤心春自身もやや疲れていた。