対峙

仁藤心春はびっくりして、いつの間にか近づいてきた温井卿介の方を振り向いた。

彼はいつ来たの?

秋山瑛真は温井卿介を見るなり、目に怒りを宿し、相手を睨みつけた。「昨日、お前は心春に一体何をしたんだ?」

「それは俺と彼女の問題だ。いつからお前が口を出す権利がある?」温井卿介は冷たく言い、手を上げて秋山瑛真が心春の手首を掴んでいる手を押さえた。「それに、今すぐ手を離した方がいい」

「もし離さなかったら?」秋山瑛真は温井卿介をまっすぐ見つめて言った。

「そうしたら、俺は…」

「卿介!」心春は相手がそれ以上話すのを止め、自分の手を力強く秋山瑛真の手から引き離した。そして秋山瑛真に向かって言った。「展志ちゃんを連れて帰るわ。さっきの件は許すけど…これからはもう二度とないようにして欲しい!」

言い終わると、心春は展志ちゃんを抱きかかえ、自分の車に向かって歩き出した。二人の男性は怒りの視線を交わしながら取り残された。

心春の姿が二人の視界から消えるまで、秋山瑛真は怒りの声で言った。「昨日、お前は一体どうやって心春を苦しめたんだ?あの香り袋のせいか?」

「苦しめた?」温井卿介は冷笑した。「お姉さんは俺のものだ。昨夜、彼女がどれだけ俺を求めていたか、そしてどれほど…」

「黙れ!」秋山瑛真は激しく叱責し、相手を怒りの目で見つめた。

二人の男性は対峙し、温井卿介は冷たく言った。「秋山瑛真、よく覚えておけ。お姉さんは今は俺のものだ。彼女は永遠にお前と一緒になることはない!」

「温井卿介、たとえお前が権力を持っていても、人の心までは支配できない。それに、お前が昨日心春にしたことで、彼女がお前を恨まないと思うのか?」秋山瑛真は言った。

もし心春が心から同意していたなら、さっきはっきり言っただろう。わざと避けたりはしなかっただろう。

だから…彼は確信できた。心春は強制されたのだと!

「温井卿介、お前は彼女を手に入れたと思っているかもしれないが、実際には彼女を遠ざけているだけだ!彼女をどんどん遠くへ押しやって、お前自身が永遠に彼女に触れられないようにしている!」

秋山瑛真は強い確信を持って言った。

そして温井卿介の表情は、たちまち非常に険しいものになった。

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仁藤心春は車で娘を連れて帰った。