ウェディングフォトの撮影当日、展志ちゃんは白いチュールのドレスを着て、まるで小さな天使のようでした。仁藤心春の着ているウェディングドレスと見比べると、まるで親子コーディネートのようで、デザインもよく似ていました。ただ、小さな子のドレスは膝丈であるのに対し、仁藤心春のドレスは裾が床に届くほど長いものでした。
「ママ、とってもきれい!」小さな子は仁藤心春を見つめて言いました。
「あなたもとってもきれいよ!」仁藤心春は娘に答えました。
小さな子はたちまち嬉しそうに目を細め、くすくすと笑いました。
子供の澄んだ笑い声に、仁藤心春の押し殺していた気持ちも、少しずつ和らいでいきました。
温井卿介との結婚に期待していなくても、展志ちゃんが喜んでいるなら...それもまんざら悪くはないのかもしれない。
子供も撮影に参加するため、カメラマンはまず子供が元気なうちに、子供のパートの写真を撮ることにしました。
カメラマンの指示に従って、三人はポーズをとりました。
温井卿介は今日、黒いスーツを着ていて、白いウェディングドレスとくっきりとしたコントラストを作り出していました。彼のあの端正な顔立ちは、わざわざ表情を作らなくても、何気ない様子でさえ撮影すると、まるで芸能人のポスターのような雰囲気を醸し出していました。
小さな子は片手で仁藤心春を、もう片手で温井卿介を引っ張り、二人の間に立って写真を撮りました。
写真を撮り終えると、小さな子は笑いながら言いました。「ママ、今度この写真を幼稚園のお友達に見せてもいい?私もパパとママと一緒に写真を撮ったって知らせたいの!」
仁藤心春は鼻先がふいに痛くなるのを感じました。こういうことは、子供にとって明らかにとても重要なことなのです。
実は展志は本当に父親がいることを望んでいたのでしょう。
ただ、写真を幼稚園に持っていくとなると...仁藤心春は視線を温井卿介に向け、彼の考えを確かめようとしました。
結局、その写真には温井卿介も写っているのですから。
「もちろんいいよ」温井卿介は仁藤心春の代わりに答えました。「もし幼稚園のお友達に写真を見せたいなら、そのときはアルバム全部持っていってもいいよ」
「わあ、すごい!ありがとう、温井おじさん」小さな展志は言いました。