誘拐事件で、温井卿介は100億米ドルの身代金で誘拐犯と交渉し、子供に会えた時だけ、指定された口座に身代金を振り込むという条件を出した!
身代金は既に用意され、誘拐犯たちは温井家が警察に通報し、警察が追跡することを知っていても、100億米ドルという金額に、誰がその欲望を抑えられるだろうか。
そのため誘拐犯は現場での取引に同意した。彼らが子供を見た時に、身代金を指定口座に振り込み、振込が確認できたら、子供を解放するという条件だ!
しかし、その過程でどれだけのリスクがあるか、誰にも分からない。
「ただし、子供の母親が取引に来なければならない」誘拐犯側はこの要求を出した。「子供の母親だけが、一人で取引現場に来ること。他の人は一緒に来てはならない。さもなければ人質を殺す!」
この要求に、温井卿介は眉をひそめた。仁藤心春一人に誘拐犯と対峙させるなんて、あまりにも危険すぎる!
「私が行きます!」仁藤心春はためらうことなく言った。
展志ちゃんを救えるなら、危険など恐れない!
「ダメだ!」温井卿介は否定した。「もう一度誘拐犯と交渉して、私が行くように変えさせる」
「何が違うの?私が行くのもあなたが行くのも、一人で行くことには変わりないわ。それに、時間を引き延ばせば引き延ばすほど、展志ちゃんは誘拐犯の手の中でより長く過ごすことになる。彼女はただの子供よ、今どれだけ怖がっているか分からない。もう時間を無駄にしたくないの」仁藤心春は言った。「それに、私には経験がある。前の誘拐事件でも、身代金を渡したことがあるわ」
彼女が言わなければよかったのに、以前の経験に触れた途端、温井卿介の顔はさらに暗くなった。
かつて山田流真が田中悠仁を誘拐した時、仁藤心春が身代金を渡しに行き、結果的に彼女は死にかけた。
彼女が行方不明になった3年間、彼は何度も後悔した。彼女に身代金を渡す機会を与えるべきではなかった。田中悠仁が死んでも構わなかったのだ!
「だから、また前回のような運が続くと思っているのか?もし再び危険な目に遭ったら?」温井卿介は問いただした。「また私にお前を失わせるつもりか?」
「私は...」仁藤心春は言葉に詰まった。
「この件は、議論の余地はない。私は絶対に同意しない!」そう言って、温井卿介は部下に誘拐犯側と連絡を取らせ、彼が取引に行くよう提案した。