第1章 遅れてきた誕生日プレゼント

夏目星澄の誕生日の日、霧島冬真の初恋の人が海外留学から帰国した。

彼は家族全員の前で彼女を残したまま、空港へ初恋の人・梁川千瑠を迎えに向かった。

夏目星澄は夏目家と霧島家の共通の笑い者となった。

「アハハハ、前から言ってたでしょう。従兄の心の中で一番大切な女性は千瑠で、お金目当てで手段を選ばないこんな安っぽい女じゃないわ」

「そうよね、冬真さんのベッドに潜り込んで、霧島家の奥様の座を手に入れられると思ったの？笑わせるわ。自分の身分をわきまえなさいよ」

霧島家は国内屈指の財閥だった。

霧島冬真は霧島グループ史上最年少の社長だった。

しかし、彼の妻は一般家庭出身の夏目星澄だった。

霧島家の親戚は星澄を軽蔑し、卑劣な手段で霧島冬真と結婚したと思っていた。

星澄は俯いて、目の前でほとんど溶けかけているケーキを見つめ、ぼんやりとしていた。

一方、夏目家の面々も、星澄のせいで恥をかかされたと感じていた。

特に彼女の両親は、器量がなく男を引き止められないと責めた。

「星澄、何度言ったことか。早く冬真との間に子供を作るべきだって。でもあなたは聞く耳を持たない。結婚して三年経っても、お腹の中はちっとも音沙汰なし。他の女性を探すのも当然でしょう！」

「私たち夫婦の顔に泥を塗られたわ。この惨めな誕生日、勝手に一人で祝ってなさい！夏目家として、こんな恥さらしには付き合ってられない！」

他の人々も星澄の両親が帰ったのを見て、もう留まる理由がないと思った。

もともと霧島冬真の面子を立てるために来ただけだった。

すぐに賑やかだったテーブルには、最後に星澄一人だけが残された。

星澄はゆっくりと手を上げ、目の前のアイスマンゴーケーキを一口一口食べた。

甘くて美味しかった。冬真が注文してくれたものだった。

最初の一切れも彼が切り分けてくれた。

彼女はとても嬉しかった。

でも彼女はマンゴーアレルギーだった。

マンゴーが好きなのは梁川千瑠だった。

ケーキを食べ終わると、星澄は自分が苦労して作った料理を全てゴミ箱に捨てた。

好きでもないなら、もう作らなくていい。

一人で部屋に戻り、アレルギー薬を飲んで眠りについた。

半分夢の中で、誰かが彼女の名前を呼んでいた。

誰？

うるさい！

星澄は手を振って、不機嫌そうに言った。「呼ばないでよ、うるさい！」

すると、本当にその煩わしい声はぴたりと止んだ。

でも突然喉が渇いて、水を飲みに起きなければならなかった。

一階のリビングに着き、電気をつけると、ソファに座っている人影が見えて、彼女は驚いた。

薄暗い明かりの中、男の顔立ちはより深みを増し、目は彼女を見ていなかったが、星澄は冷たい雰囲気を感じ取ることができた。

そして彼がグラスを持つ指には、目を刺すような黒いダイヤの指輪が光っていた！

それは霧島家の若殿様だけが持つ印だった。

星澄は胸に手を当て、眉をひそめて尋ねた。「いつ帰ってきたの？」

男は深い淵のような瞳を上げ、冷たい視線で彼女を見つめながら答えた。「お前が『うるさい』と言った時だ」

星澄は少し気まずくなった。誰が真夜中に帰ってきて寝もせずに、彼女の名前を呼ぶと思うだろうか。

「何か用？」

冬真は長い指でテーブルを軽く叩き、そこには精巧なギフトボックスが置かれている。「お前の誕生日プレゼントだ」

壁に掛かった時計を見ると、午前一時を過ぎていた。星澄は遅れてきた誕生日プレゼントに興味を示さなかった。「ありがとう。そこに置いておいて」

冬真は星澄の無関心な態度に不満そうだった。「開けて見ないのか？千瑠が言ってたよ、女の子ならみんな喜ぶって」

また梁川千瑠！

本当に嫌な名前だ。

星澄は冷たい表情で言った。「へえ、千瑠が好きなら、彼女にあげればいいわ。私には必要ないから」

冬真の顔には表情がなかったが、その声には冷たさがにじんでいた。「夏目星澄、おまえ、それはどういう意味だ？」

せっかく誕生日プレゼントを贈ってやったのに、それすら気に入らないっていうのか？