第22章 永遠日の目を見ない愛人

夏目星澄の心は複雑な思いで一杯だったが、表情は穏やかそのものだった。

どんなに不愉快でも、梁川千瑠に笑い物にされるようなことはしたくなかった。

梁川千瑠は手首のダイヤモンドブレスレットを触り続けながら、自慢げに続けた。「実は私と冬真さんは幼なじみなの。彼はずっと私を大切にしてくれて、甘やかしてくれていたわ。あの事故さえなければ…」

夏目星澄はそれ以上聞く気が失せ、冷淡な態度で遮った。「梁川さん、私を呼んだのは物語を聞くためじゃないでしょう？要点だけ話してください。私も時間は貴重なので」

梁川千瑠は軽蔑するように肩をすくめた。「どう、もう怒りが抑えられないの？霧島家の若奥様の座のためなら、ずっと我慢できると思ってたのに」

夏目星澄は唇に冷ややかな笑みを浮かべた。「何で私があなたみたいな厚かましい、人の夫を誘惑する女に我慢しなきゃいけないの！」

梁川千瑠は平然と嘲笑った。「じゃあ何を待ってるの？できるなら私を殴ってみなさいよ！」

夏目星澄は拳を握りしめ、本当に思い切り平手打ちをしてやりたかった。

しかし、梁川千瑠の恐れを知らない様子を見て、やはり我慢した。

冷静でなければならない。

さもないと、彼女が霧島冬真に告げ口をすれば、離婚はさらに難しくなってしまう。

夏目星澄は冷笑いを浮かべながら梁川千瑠を見つめ、冷たい口調で言った。「あなたを殴ったら、私の手が汚れるだけよ」

梁川千瑠は夏目星澄が罠にかからないのを見て、めげることなく、まだ手があった。

「もういいわ、そんな高潔ぶるのはやめなさい。あの時、冬真さんが事故で植物人間になりかけた隙に付け込んだのよね。あなたが彼にふさわしいと思ってるの？」

「私こそが彼が本当に愛している女よ。あなたなんて彼のメイドにもなれないわ！賢明なら早く冬真さんと離婚して、本来私のものだった座を譲りなさい。そうすれば経済的な補償も多めにしてあげるわ。さもないと無一文で霧島家から追い出されることになるわよ」

梁川千瑠の傲慢な態度に、彼女は冷笑を漏らし、皮肉っぽく笑いながら言った。「梁川さん、海外に長くいすぎて、基本的な法律の常識も忘れちゃったんですか？私は霧島冬真の合法的な妻です。離婚するかどうかは私たち二人の問題で、部外者のあなたに命令される筋合いはありません」