第21章 挑発

梁川千瑠は霧島冬真が黙っているのを見て、夏目星澄のことをもう話題にしなかった。

その代わりに、テーブルの上にある美しい宝石箱に目を向けた。

「わぁ、素敵な箱ね。このブランドのジュエリーはフランスでしか売っていなくて、国内では手に入らないって聞いたわ」

梁川千瑠は話しながら宝石箱を開けた。

中には非常に美しく高価なカラーダイヤモンドのブレスレットが入っていた。

梁川千瑠は一目で気に入り、すぐに手首に着けてみた。「冬真さん、このブレスレットとても素敵ね。大好き。私へのプレゼント?」

霧島冬真の鋭い瞳が少し沈んだ。「違う。これは星澄に買ったものだ。気に入ったなら、別のを買って贈るよ」

梁川千瑠は夏目星澄へのプレゼントだと聞いて、より一層欲しくなった。そこで彼女は霧島冬真に甘えるように言った。「でも冬真さん、私はこれが欲しいの。これを私にくれて、星澄には別のを買ってあげたら?」