第26章 自ら彼女にキスをした

これは結婚して三年目、二人が初めてこんなに親密に触れ合った。

夏目星澄は緊張と苛立ちを感じていた。

霧島冬真が突然なぜこんなことをするのか理解できなかった。

何度も力を込めて押しのけようとしたが、離すことはできなかった。

そして、彼女の上に覆いかぶさるように圧し掛かった霧島冬真は、彼女の拒絶に不満を感じたかのように、さらに激しくキスをした。

夏目星澄は息も絶え絶えになり、窒息しそうだった......

最後には霧島冬真が惜しむように彼女を離し、顎を持ち上げながら、魅惑的な声で尋ねた。「まだ怒ってるの?」

夏目星澄は顔を赤らめ、どうしていいか分からなかった。

頭の中は真っ白になっていた。

しばらくしてから、やっと彼の意図が分かった。

つまり、彼女の怒りを鎮めるためにキスをしたということ?

なんという理不尽な論理だ!

夏目星澄はさらに怒りを感じた。

相手にしたくなかった。

霧島冬真は彼女が唇を尖らせ、怒った様子を可愛らしく感じ、知らず知らずのうちに口角が上がっていた。

その後、彼は車で夏目星澄を彼女の会社まで送った。

夏目星澄は目的地に着くと、すぐにドアを開けて降りようとした。

しかし霧島冬真はその時彼女を呼び止めた。「待って、今夜何時に仕事が終わる?迎えに来るから。」

夏目星澄は足を止め、振り返って冷たく言った。「結構です。今夜は林田瑶子が迎えに来てくれますから。」

霧島冬真は少し困ったように説明した。「でも、お婆様が僕たち二人が何日も実家に帰っていないことを心配していて、僕たちの仲が悪くなったんじゃないかと気にして、食事も睡眠もままならないと言っているんだ。」

夏目星澄は霧島お婆様の自分への優しさを思い出し、すぐに心が和らいだ。「分かりました。じゃあ、夜の6時に迎えに来てください。」

霧島冬真は頷き、上機嫌で去っていった。

夏目星澄はその場に立ち止まり、信じられないような様子で自分の唇に触れた。

彼から積極的にキスをしてきたのだ。

これは彼も少しは自分のことを好きなのかもしれない?

一方、霧島冬真が会社に着くと、すぐに携帯が鳴った。

見ると梁川千瑠からの電話だった。

先ほど夏目星澄が他の男性と接触するのを防ぐために切った電話だったので、今度は出ることにした。