第43章 次はない

その言葉を聞いて、皆の表情が驚きに変わった。

霧島奥様には霧島冬真という一人息子しかいないことを、皆知っていた。娘はいないはずだった。

それなのに彼女は「お母さん」と呼んでいる。養女なのか、それとも息子の嫁なのか?

人々は驚きの目で、二人の関係を密かに推測していた。

夏目星澄は少し申し訳なさそうに言った。「お誕生日おめでとうございます、お母さん。道が混んでいて、少し遅くなってしまいました」

水野文香は全く気にしていない様子で、「遅くないわよ。来てくれただけで嬉しいわ。冬真が迎えに行かなかったのが悪いのよ」

夏目星澄は首を振った。「冬真さんのせいではありません。私が自分で来ると言ったんです」

霧島冬真は少し不機嫌そうだった。自分で来るのはいいとして、なぜ自分が贈ったドレスを着ていないのか。