その言葉を聞いて、皆の表情が驚きに変わった。
霧島奥様には霧島冬真という一人息子しかいないことを、皆知っていた。娘はいないはずだった。
それなのに彼女は「お母さん」と呼んでいる。養女なのか、それとも息子の嫁なのか?
人々は驚きの目で、二人の関係を密かに推測していた。
夏目星澄は少し申し訳なさそうに言った。「お誕生日おめでとうございます、お母さん。道が混んでいて、少し遅くなってしまいました」
水野文香は全く気にしていない様子で、「遅くないわよ。来てくれただけで嬉しいわ。冬真が迎えに行かなかったのが悪いのよ」
夏目星澄は首を振った。「冬真さんのせいではありません。私が自分で来ると言ったんです」
霧島冬真は少し不機嫌そうだった。自分で来るのはいいとして、なぜ自分が贈ったドレスを着ていないのか。
デザインが気に入らなかったのか、それとも単に自分が贈った服が嫌いなのか?
梁川千瑠もこの時、夏目星澄の着ている服が想像していたものと違うことに気付いた。むしろ自分よりも目立っているほどだった!
そこで彼女はすぐに霧島冬真の側に寄り、驚いたふりをして尋ねた。「星澄さん、どうして冬真さんが買ってくれたドレスを着ていないの?私も選ぶのを手伝ったのに、気に入ってくれると思ったのに」
そのドレスの話を出されなければよかったのに、出された途端、夏目星澄は怒りを抑えられなくなった。
やはり霧島冬真が突然、義母の誕生日パーティーにそんなドレスを贈るはずがない。
きっと梁川千瑠が裏で何かしたに違いない!
「そうなんですか。梁川さんがアドバイスしたとは。それなら言わせていただきますが、あなたの審美眼には大きな問題があるようですね」
夏目星澄はゆっくりとハンドバッグから携帯を取り出し、写真フォルダーからそのドレスの写真を開いた。
「こんな場所で、真っ赤でキラキラのスパンコールが付いていて、胸元が深くVネック、背中が空いているようなドレスを着させようとするなんて、まるで色気を売る下品な女のようじゃありませんか。私を恥をかかせたいのか、それとも霧島家の面目を潰したいのか、わかりませんね」
梁川千瑠は単に夏目星澄と霧島冬真の関係を引き裂こうとしただけだったのに、矛先を自分に向けられてしまった。
柔らかな顔立ちが一瞬で凍りついた。